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    食品の保存に対する知識向上の為に

     菌検査と水分活性値と食品の保存について関係

微生物が増殖するにはそれぞれの微生物に適した栄養素、PH、水分等を必要とします。

また酵母も活動するためにはやはりそれぞれに適した栄養素、PH、水分等を必要とします。

この時の活動は食品の水分含有量に影響されるのではなくて、水分の存在形態が問題になります。なぜなら、その水分中に微生物が利用できる形態として(自由水として)どれだけあるかにかかっているからです。

 食品には水分が含まれていますが、その存在する形態から結合水、溶解水、自由水の三つに分類されます。結合水は食品成分と化学的に結合しており、一般の乾燥法では蒸発せずにいるし、マイナス30度以下でないと凍結もしないのです。氷点下数十度という極寒冷地でも木が凍らないで生存できるのはこの結合水のおかげです。溶解水は食品中の可溶成分が溶存しており、その結合力は結合水よりは弱いのです。自由水は食品との結合力は非常に弱く、食品表面の隙間にしみこんでいる水分が多く、また、簡単に乾燥剤等で蒸発させることも出きるのです。。この水分の内で、微生物が生存繁殖するに必要な利用できる形態の水の状態は自由水でその比率を水分活性値(AW) Water Acitivityといいます。

 水分活性値の計測のしかたは密閉された容器内で純粋の蒸気圧を基準にしておなじ蒸気圧で食品にこれ以上入らない(平衡蒸気圧とをくらべて測ります。食品には水分だけではなく蛋白質やデンプンなどの固形物が含まれているので、相対的には水の少ない状態となっているので、値は0以下になります。わかりやすく言えば水分活性値に100を掛ければ食品を密閉した場合の容器内の湿度となります。この容器内湿度が食品の保存性に大きく関わっているのです。

 食品中の炭水化物、蛋白質、脂肪などの種類及び構造にと存在状態により水素結合が変わり水の保持状態は変化します。これを結合水といいます。
 食品中の水分を利用して塩分は食塩水としてナトリウムイオンと塩素イオンへの水和として働きます。
 食品中の水分を利用して砂糖は水素結合を行い水分活性値を下げる方向で働きます。

 水分活性値0.25以下の場合は食品中の水分はすべて結合水とみなすことができます。この場合は食品の変質を防ぐことが出来ると見て良いでしょう。

 繰り返しますが水分活性値は食品に含まれる水分量ではなくて、自由水という食品内を自由に動き回ることの出来る水の値を言います。まあ、わかりやすく言うと細菌が利用しやすい状態の水ということでしょうか。

 たとえば、塩漬けの食品や、さとうシロップ漬けの食品の場合に腐らないのは、塩分や糖分のお陰で自由に動き回ることの出来る水の値が極端に低いからです。

 この原理を利用して、水分含有量の多い食品でも水分活性調整剤(塩化ナトリウム、砂糖、アミノ酸類)やアルコール類を投入することによって、その食品の貯蔵性を高めることができます。(しかし、低水分活性環境下においても増殖して食品を腐敗させる微生物も存在いたします。低水分活性下でも増殖する微生物とはカビ、酵母でこれらは乾燥食品・塩蔵食品であっても腐敗させる原因となっていますので注意が必要です。)。

 いにしえよりある、塩蔵法、糖蔵法、乾燥法はこの原理を応用したモノです。
 現代ではこれに冷凍法が入ります。

 なんども申しますように、微生物は砂糖や塩、醤油、の溶解した水及び氷は自分の増殖に利用することができません。食品の中に塩や砂糖が溶け込むとき砂糖・塩等の成分が水と強く結びつき微生物が利用しにくい形となります。なぜなら、食品の水蒸気圧は低下するからです。この値を水分活性値といいます。

 水分活性は、微生物の増殖だけではなくて、食品の酵素反応、食品成分の化学反応、非酵素的褐変、酸素による脂肪の変色、過酸化脂質の生成、食品のテキクスチャー、栄養素の分解などにも影響します。たとえば水分活性が低くなると脂肪酸の酸化やカルボニル反応が起きやすくなります。食品を製造する者はもっとこの値を気にするべきです。

 次に実際の水分活性値と微生物(細菌等)の活動限界について見てみましょう。

    魚介類、肉類、果物等比較的含水量の多いものの水分活性値は0.99から0.98です。
    0.98ではボツリヌス菌によるボツリヌス毒素の産生があります。
    0.97から0.96ではウエルシュ菌の増殖があります。
    0.97から0.94ではサルモネラ菌の増殖があります。
    0.96から0.94ではボツリヌス菌の増殖があります。
    0,96から0.94では大腸菌の増殖があります。
    0,88から0.86では黄色ブドウ球菌の増殖があります。
    0.80では真菌(かび)が発生します。→この場合水分量の少ない食品であっても空気中の水蒸気や水分を利用して増殖できます。

    0.7からは、通常微生物の成育限界といわれ、増殖することはないといわれています。

    米や大豆のような乾燥したモノは水分活性値が0.64から0.66です。

   0.65からは一般の酵素反応の限界といわれています。これはカビ等が分泌した酵素が働く限界だということです。麹を使っておみそを作るときもこの値より上でないと作れないと言うことです。


カビの生育条件について
 カビの生育条件は数ある微生物の中でも最も水分が少なくて増殖し、一般に湿度80%以上、水分にして15%以上あればほとんどのカビ類は増殖します。
 ただし麹カビは湿度62から63%水分13から14%で増殖します。→こ性質を利用して醸造発酵をおこなうのです。
 結論として食品の水分含量が10%以下であればカビの増殖することはありません。

 食品の種類としては、澱粉質のものに繁殖しやすく、米、小麦、そしてこれらを用いた加工食品は、通常、水分活性値が0.135から0.155にあるので高温多湿の空気中に放置しておくとカビが繁殖します。

 乾燥米菓、煎餅水分値が4%から8%であるのでカビの発生する心配はないのですが、やはり高温多湿の空気中に放置するとカビが発生しやすい13%から14%とになるので注意が必要です。

パン、カステラ、生菓子などは水分が30%付近にありカビが猛烈に繁殖しますので注意が必要です。

 カビの増殖最適温度は25度から30度で15度以下40度以上になると増殖率は低下します。しかし家庭用冷蔵庫でも零度から5度の範囲での温度変化が出し入れの結果はげしいのでゆっくりではあるがカビが繁殖します。

 高温側では60度10分から15分でたいがいのカビは死滅しますが、一部のカビは胞子を作って耐熱性を持ち100度5分に耐えるカビが一杯あります。

 カビの生育条件の中で酸素は重要で、酸素濃度が1%以下まで下げると生育は著しく抑制されます。0.1%にすればごく限られたカビしか生育できないのです。
 
 結論的に申しますと。酸素濃度を1%以下にすれば大丈夫ということです。

 二酸化炭素の場合は静菌作用があり、二酸化炭素が50%以上あれば一般のカビのほとんどは生育できません。水分活性値が低ければ30%でも大丈夫です。ただし、二酸化炭素は実際の注入現場では臭いがでることがあり、注意が必要です。

 PHが1から11の間でカビは生育し5から6で最もよく生育します。またカビの胞子の発芽はPH3から6の間です。

 結論を申しますと、包装によるカビ防止方法として

1,脱酸素剤で容器内酸素を除去すること。

2,二酸化炭素、または窒素ガスとの混合ガスによるガス充填包装をおこなうこと。(窒素ガス100%充填はカビ防止効果の持続性が低い。

3,包装後約200度での乾燥熱で食品表面のカビを殺菌する、紫外線やマイクロ波で殺菌する方法もあるが、表面や内部を均一に殺菌することが困難で使用例は少ない。

4、AITの静菌作用を利用したカラシード、エチルアルコールの殺菌力を利用したアルコール製剤(アンチモールド等)を封入する。

 以下 代表的な食品の水分値および水分活性値を書き出します。

 やさい、90%0.99から0.98
 果実 89から87%同上
 魚介類 85から70%以上同上
 食肉類 70%以上同上
 卵    75%以上0.97
 魚肉ソーセージ88から86%0.98から0.96
 焼きちくわ 75から72%0.98から0.97
 かまぼこ 73から70%0.97から0.93
 開きアジ 68%0,96
 チーズ 40%同上
 ジャム 20%0.94から0.82
 パン 35% 0.93
 ハムソーセージ 65%から56%0.9
 羊羹 20% 0,87
 イカ薫製 66% 0,78
 ケーキ 25% 0,75
 ゼリー 18% 0,74
 キャンデー 1% 0.65から0.57
 ビスケット 玉子入り小麦粉せんべい 4% 0.33
 チョコレート 1% 0.32
 おかき せんべい 3% 0.25
 えびせん 2% 0.25
 カリントー 2% 0.25