発酵と醸造
かつてエジプトにおいてパン作りが為されたおり、パン生地を乳酸発酵させて雑菌の発生を抑える方法が発見された。
この結果ビールを造り出すことに成功した。乳酸発酵のパン生地を上手く発酵させて時間をおくとビールになる。乳酸発酵パン生地(サワードウ)ができなければビールを造り出すことは不可能であった。このことからビールが液体のパンと呼ばれるのは至極道理のことである。
日本酒においては「水元」と呼ばれる酒造用酵母の原型があった。
「水元」とは生米に焚いたご飯を仕込んで、生米についている微生物を働かせていわゆる「ソヤシ」(酵母と乳酸菌)を作った。通称酒種と呼ばれるものである。
こういう意味においてパン作りと酒造りは同じである。
製パンは醸造と同一語といってもさしつかえない。
アルコール発酵、酢酸発酵などある特定のものを生成する行程を「発酵」とよぶ。
アルコール、乳酸、酢酸、その他のミネラル分を生成する行程を「醸造」と呼ぶ。
私たちの祖先が作り出した伝統的醸造に日本酒がある。
日本酒は、酒造りの手法の一つで、米コウジと蒸し米を混ぜて、パンで言うところの(自然)発酵種をつくり、それを元にして発酵させ て作る、このときに出来た酒を一般に「生もと造り」の酒という。
「生もと造り」の酒には微生物学的に観ると実に綱渡り的な微妙な範囲の中で発酵が進む。
自然界に存在する雑菌が当然のごとく入っている。その雑菌の増殖より早く球菌型の乳酸菌が現れて増殖しその後に桿菌型のラクトパチルス乳酸菌が出てきて増殖する。この乳酸菌が増殖すると、サケ酵母が発酵しやすくなり、雑菌は抑えられ酵母だけしか殖えない。その結果雑菌の発生は抑えられ日本独自の酒造りの日本酒が出来る。
現在では酵母にアルコール耐性をつけたり、低温(5度)でも生育できる酵母が発見されている。
日本ではこの日本酒のもろみから最初に発見されたので、ラクトパチルス・サケという名前が付けられた。(最近の学名では最後にIがついて、ラクトパチルス・サケアイと呼ばれている)