パンの賞味期限(劣化老化についての考察)

老化の理論

 パンは焼成後固くなったグルテンと膨潤したでんぷんによってそのスポンジ状の組織を作っている。時間が経過すると、水分が蒸発し硬くぼろぼろになってゆく。窯だし直後のパンは約46パーセントの水分を持っているが、粗熱を取った段階では、約40パーセントに落ち着いている。パン自身の湿度を電子湿度計を差し込んで量ってみると98パーセントで、このまま放置すると前述のようにボサツいて行く、もし、包装しておけば、ぼさつき、は止まるが、味の劣化は避けれない。ここで、パンの老化は単に水分の蒸発だけではなく、でんぷんのアルファ化が問題であることが推察できる。

 

 でんぷんのアルファ化問題

 でんぷんはご存知のように、パンの主成分であり、この老化(アルファ化度)の動向がパンの味覚に大きく影響する。

 

 でんぷんの性質

 でんぷんとは、結晶性の高分子化合物で、十分な水分(約50パーセント)と一緒に加熱すると、ミセル構造が崩れ、膨潤して、糊化するが、加熱を停止すると、再結晶化し、ミセル構造に戻ろうとする。⇒でんぷんの老化

 保存温度によっても、老化の度合いは違い、もっとも老化しやすい4度では、パンの硬化の進行も早く、味の劣化も著しい。

 

 グルテンの性質

 グルテンはでんぷんと違い可逆的変化が起きない代わりに、水分が蒸発してゆくにしたがって、飛躍的にかたくなる。古いフランスパンが固くなるのはこのためである。

 

老化を遅らすための方策についての考察

1、温度 糊化したでんぷんは、水分値が、30から60パーセント、温度0度付近の保存条件になると急速に老化する。そこで、その条件から逃げるため、-20度ふきんにて、水分の蒸散を防いで保存すると約1ヶ月鮮度を保持することが知られている。

2、乳化剤の活用 乳化剤は生地の進展性をよくし、ふくらみのよい柔らかなきめ細かいパンを作る作用があるので、生地改良剤として、使用されるが、でんぷんの再結晶化__(ベータ化)を、抑制する効果があるので、老化防止剤としても、使われることが多い。モノグリ(モノアシルグリセリン)ステアロ(ステアロイ乳酸カルシウム)エスイー(シュガーエステル)などが用いられる。なお、添加量は対粉02.から1パーセントである。