6,フォンダン
フォンダンとは砂糖の再結晶化した製品のことで「口中でとろけるような菓子」という意味である。日本の和菓子界においてもすり蜜と呼ばれているものがこれに当たる。
以下フォンダンの調理性について考察する。
フォンダンの原料
上白糖を普通は使う。上白糖にはビスコ糖といわれる転化糖が微量に含まれ、これが
フォンダンの結晶を小さくなめらかにする効果がある。
大量生産するときはグラニュー糖に添加するものとして、
冬季は
パン用では水21%水飴3.6%レシチン0.01%温度117度
洋菓子用では水分21%水飴14%レシチン0.01%温度116度
夏季は
パン用では水分21%水飴3%レシチン0.01%温度118度
洋菓子用では水分21%水飴12%レシチン0.01%温度117度
を添加して作る。
→水飴は細かい結晶をつくり、乳化性のあるレシチンは製品の質の低下を防ぐ。
製造時における温度とフォンダンの品質
砂糖の煮詰め温度は113度から119度でこの差は季節や湿度と関連する。
夏季や雨天時の高湿度のときは煮詰め温度を高くする。
パンは水分が多いので煮詰め温度を高くして水分の少ないフォンダンを作る方がよい。
フォンダンの出来る原理
115度まで加熱した砂糖液を冷却して過飽和にし、これを攪拌すると結晶ができてくる。通常115度まで加熱した砂糖液の濃度は約87%である。これを攪拌しながら冷却し40度まで下げると飽和濃度は71%程度になり約16%の砂糖が析出してくることになる。
このように過飽和を作ると結晶するのであるから、結晶しにくい時は冷却しながら粉糖を加えてやると良い。投入した粉糖は核となってその周りに結晶をつくる。
攪拌時の温度と結晶の大きさ
煮詰めた砂糖液を冷やして鍋の中で攪拌すると高い温度52度の場合は大きな結晶を作り、温度が低い38度のときは小さい結晶を作り、とろけるようなフォンダンとなる。
攪拌は、フォンダンが固くなって操作しにくくなるまで、十分に行う。次に少し手でもんで角を落としてから密閉保存すると、よいフォンダンとなる。
フォンダンの貯蔵中の変化
フォンダンは大小多数の砂糖の結晶が、シロップに囲まれた状態になっている。砂糖は溶解度が高いので、温度が少しでも高くなると小さな結晶が溶ける。次に温度が下がれば、過飽和になるので、近くの結晶に過飽和分の糖が付着して、その結晶を大きくするこうして平衡を保ちながら、結晶は大きく成長し、質が低下する。
市販品では、この品質低下を防ぐために、各種添加物が使われている。
フォンダンの添加物についての考察
フォンダンには良質にするためにそして保存中の品質の低下を防ぐ為に、卵白、レシチン、転化糖、クリームタータ、お酢、レモン汁等の様々な添加物が加えられている。
1,卵白、レシチン→フォンダンの中に少し泡立てた卵白を3〜6%添加すると貯蔵中の結晶の生長を防ぐことが出来る。その理由は卵白が結晶に吸着されるので、フォンダンとが安定するためである。レシチンにも同様の効果がある。
2,良質にするための添加物→転化糖(果糖とブドウ糖の混合物)を添加すると、よいフォンダンができる。5〜6%の添加では柔軟性ができ、11%では10〜13ミクロンの細かいフォンダンになり、また、果糖を7%添加したところ、上あごに着いて離れないくらいの細かいフォンダンが出来る。
しかし、添加量が多すぎて転化糖や果糖が20%以上になると、色が悪く、流動性があって水っぽいフォンダンになってしまう。
この他、化学薬品であるクリームタータ(酒石英)が、フォンダンや飴細工時に添加されることもある。蔗糖をゆっくり添加するので使いやすく、結晶を細かくなめらかにする、使用量は蔗糖の0.3%くらいが適量で、多くなりすぎると流れるようになり、味も酸っぱくなる。
酒石酸、クエン酸などの酸類も同様の効果を持つが、クリームタータよりも作用が強いので、使いにくいという難点もある。
水飴も、手近にある添加物である。含まれているブドウ糖は、フォンダンの結晶を細かくし、デキストリンも貯蔵中の結晶の生長を防ぐ効果がある。
3,白色にするための添加物使用する水が硬水であり、PHが高いと製品のフォンダンの色は悪くなる。
このような時、色を白くするためにクリームタータや卵白を添加するとよい。前者は水を酸性にして白くしてくれる、後者は、空気の細かい分子がフォンダンと結合して白くなり、卵白は空気分子の集合を妨げて白さを保つからである。
フォンダンとの熟成
フォンダンは12時間から24時間放置しておくと、作った直後に比べて、締めっぽくなめらかになる、これはフォンダンの結晶の角が取れるからである。取れた角の結晶が溶けた為、大きい結晶が動けるようになった結果であり、この効果をフォンダンの熟成という。
フォンダン使用時の注意点
市販品は品質低下を防止するため、水分を減らして堅めに仕上げている、もし柔らかいフォンダンを作ってしまった場合は結晶が出来にくいので粉糖やココアを入れて結晶核にして固くする。これをアイシングという。
フォンダンの結晶形
結晶は単斜品形接面体であるが、過飽和度、温度、攪拌状態によって影響を受け、6面体から32面体に及ぶといわれている。
この結晶を大別すると、柱状型と平板型とに分けられるが、いくつかの結晶が不規則に着いたものも見られる。