4,果糖、蜂蜜
 果糖とは果実に含まれている糖で、左旋性であるところからレプローズ(左旋糖)とよばれていた。この性格のため体への吸収が遅く耐糖尿病性が高く近年注目されるところとなった。
 かつては単独で抽出することが困難であったので、非常に高価で医薬品でしか見ることが出来なかったが、近年、酵素の研究が発展し異性化酵素分解によって比較的安価に製造されこのとき同時に出来るブドウ糖を分離するイオン交換膜ができて単独抽出を安価に実現させることとなった。この結果現在では食品用としてジュース等の飲用によく用いられている。

 天然の果汁の中では、ブドウ(9.3%)リンゴ(6.9%)スイカ(5%)に多くふくまれている。菓子の原料としてこの果実が使われる理由がこの辺にもあるのであろう。
なお、天然の蜂蜜の中には36.6%含まれている。(残り34.8%はブドウ糖)

果糖の甘味度についての考察
 果糖の甘味度は、温度によって大きく変化する、その理由は、水溶液中において温度によっていろんな形の分子構造をつくるからであるとされている。
 温度が上がるとα型が多くなりベータ型が減るため甘味が弱くなる。反対に温度が下がるとベータ型が増えα型が減るため甘味が強くなる。
 この性質を利用してジュース等の冷やして飲用する食品に多量に用いられている。

 果糖の溶解度についての考察
 果糖の溶液は高温では蔗糖より早く分解を始めるため、蔗糖液のように過飽和液も出来ず、そして攪拌しても再結晶しないので、単独ではフォンダンも作れない、当然キャンデーのような飴もできない。ただし、この性格を利用してフォンダンの再結晶化を遅らす効果(シャリ止め)を期待できる。
 アルコールに対しては非常に良く溶けるので、カクテル等の飲料にそのまま使われることが多い。

 果糖の着色についての考察
 菓子の生地に果糖を入れて焼くと強い着色反応が見られる。これは、果糖が熱に対して砂糖よりも20度低く約140度で分解してしまうためである。焼き菓子においては早く濃く色づくがその色はぼけた褐色で一般には好まれない。
 また、果糖はアルカリには非常に弱く、直ぐに分解するので、着色反応をおこす。ただし酸には強くレモン液やお酢の中でも安定している。


蜂蜜

蜂蜜の歴史は古く、昔から世界各地で甘味料として又菓子の原料として使われてきた。
蜂蜜と花の蜜を蜂が集めて巣に入れる際に蜂の唾液(インベルターゼ)の作用によって、果糖とブドウ糖に分解される。果糖が多い蜂蜜は透明な液状を示し別名液体蜜ともいって、製菓原料としては職人の間では1級品とされている。
 蜂蜜の保管時に冷蔵庫等の温度の低いところにおくと白濁したり固まったりするが、これは中に含まれているブドウ糖が結晶したために起こる現象である。ブドウ糖の含有量の多いものは結晶しやすく作業性に不備をきたすので、製菓原料としては良品とはいえない。

 蜂蜜中には果糖とブドウ糖のほかに水分蛋白質無機質ビタミン酵素等が含まれているこれによって特有の風味を持ち砂糖に比べて栄養上も優れている。

 以上の性質を利用して製菓においては、その風味と甘みのやさしさが好まれている。優雅な焼き色を付けたいときやつやを出したいときに小麦粉煎餅クッキーなどに使われ、また、保水性と味の好ましさから長崎カステラなどに用いられている。