2,砂糖の種類

@ 精糖段階における砂糖精製の度合いによる分類
 砂糖は製法上、ィ、分蜜糖 ロ、直接消費糖 ハ、含蜜糖の3っつに大きく分けることが出来る。
 ィ、分蜜糖 原料の甘藷(砂糖キビ)には約20パーセントの当分が含まれている。これから、タンパク質や固形分、水分を除去して分蜜糖にする。我が国には、この状態で輸入されている。
 この分蜜糖から、不純物、色素、水などを取り除いて、精製糖を作る。

 精製糖から、成分や粒度、加工法によって次の如く分類される。
 ィ、白双(はくざら)は、ハードシュガーと呼ばれ、次の如く分けれる。 
1,上双
     無色透明で蔗糖分が多く、転化糖、灰分を含まず、水分もほとんど無い純度の高い物質で、その粒度は1ミリから2ミリである。
   2,グラニュー糖
     無色透明で1の上双に次いで純度が高い、その粒度は0.25ミリから0.55ミリであるため、溶解度が高く、洋菓子や焼き菓子や飴の原料砂糖として、また、飲料やアイスキャンデーなどにも用いられることが多い、
   3,中双
     淡黄色を帯びた、やや純度の低い砂糖で、粒径は大きく、3ミリくらいもある。
     →つまり、溶かしにくいので使いにくい場合もある。

 ロ、車糖は、白双よりやや純度が劣り、加工法によって次の3っつに分類される。
    1,上白糖 通常家庭で使用するスーパー等で特売にて入手出来る砂糖である。
      日本独自の砂糖で、海外には無い。日本古来よりある和三盆(わさんぼ)糖
      に味を似せるため少量の転化糖シラップ(ビスコ糖)が混合されている。このため、独特のしっとり感と湿っぽい感じがある。これが、お餅等につけて食べるとき独特の食感と味になっているが、逆に長期に保存すると固まってしまう性格があり、固まってしまうと溶けにくく使いにくくなる。
    2,中白 俗に四温、赤砂糖と呼ばれる砂糖で、淡い独特な黄色をしている。純度は上白よりも低いので、味的には濃厚(癖が在る)である。
    3,三温 中白より、さらに純度が上白より落ち、濃厚な味と風味がある。
          この性格を利用して特殊な菓子に用いられる。
      
       ここで、取り上げられた”温”という表現は、色の白さを表わし、三温よりは四温、四温(上白、中白)よりは五温(白双)とだんだん白くなる。

  ハ、加工糖 角砂糖、紛糖、顆粒糖、液糖、コーヒーシュガー等それぞれの用途に使いやすいように加工されているものである。
      1,角砂糖 グラニュー糖にグラニュー糖の飽和溶液で湿り気を加え、型抜き圧縮して作られたもので、グラニュー糖本来の純度が高い性格を利してコーヒー、紅茶、等の飲み物に添える砂糖として、かつては高級感があって人気を博したが、現在では、低迷している。
      2,粉糖 上双もしくはグラニュー糖を磨砕して微粉にしたもので、保存時の利便性を鑑み、1%から2%のコーンスターチが添加されているため長期保存しても固まらない。医療用(薬用)は、この処置がなされていない。
          菓子においては、擂り蜜等熱を加えずに砂糖を溶かしたいとき、あるいは急いで砂糖を溶かしたいときに用いる、しかし、前述のように、
        コーンスターチでんぷんが入っているので注意が必要である。
          又コーンスターチのおかげで固まりにくいのでデコレーションの雪代わりにも用いられる。
       3,顆粒糖 砂糖の微粉末をまぶして顆粒状にしたもの→多孔質になるため溶けやすいフロストシュガーもこの仲間である。純度が高くかつ紛糖と違い固着防止剤(コーンスターチ)が含まれていない。 
       4,液糖 キューバ危機の折自由社会の砂糖需要を賄うため急遽開発され
         た。 原料や製法が多種にわたり成分の違いも広範囲になり一概に説明できない。一般的にはでんぷんに液化酵素を働かせ次に糖化酵素を働かせて、ブドウ糖や果糖や異性化糖であるオリゴ糖やいろいろ生成させた酵素反応を利用して原料のでんぷんを分解して作られている。
       5,コーヒーシュガー 粗目砂糖にカラメルをかけて褐色にしたもの独特の風味がある。この仲間には、スターダストシュガー、レインボウシュガー等の表面に食用色素をかけた装飾用砂糖がある。

  二、直接消費糖 原料としてサトウキビ(亜熱帯性)ビート別名砂糖大根(北海道)
          がありその製法はビートの場合次の如しである。

第一行程 原料の洗浄後根を切断(根の部分に糖分がある→ビートの場合15%前後)
第二行程 60度前後の湯に浸し糖分を滲出させる
第三行程 炭酸ガスを吹き込み有機酸や色素及びタンパク質を灰汁として浮かせて除去する。
第四行程 蒸留塔に入れ濃縮及び結晶化させる
第五行程 遠心分離器に入れて結晶糖を分離する

こうして出来たものをサトウキビの精製法と同じ方法(第六行程以下)で耕地白糖と粗糖に分けられる。

ちなみにサトウキビの製法は次の如しである。

第一行程 サトウキビの切断
第二行程 圧縮して茎汁を搾り出すと共に茎の繊維を除去
第三行程 石灰汁を入れてPHを7にすると共に蛋白質除去色素脱色を兼ねる。
第四行程 濾過濃縮して固形物を除去する→白下糖が出来る。
第五行程 遠心分離器に入れ結晶糖を取り出し水分を除去する。→分蜜糖の出来上がり。
第六行程 遠心分離器に入れ糖蜜除去
第七行程 蒸留塔に入れ、水、蒸気にて不純物除去
第八行程 珪藻土を入れ、臭み等のにおいを除去
第九行程 活性炭を入れ、色素等を脱色除去する。
第十行程 真空釜にいれ水分を蒸発させる。→精製糖の出来上がり。

耕地精白糖とは、五温→白双、三温四温→車糖、ビートグラニュー糖のことをいう

粗糖とは、赤双、中双のことで、主に精製糖の原料糖としてつかわれている

含蜜糖とは、糖蜜を含んだ糖のことで、赤糖(台湾、フィリッピン産)、黒糖(沖縄、奄美大島産)、のことをいう。それぞれ、塊状もしくは顆粒状(前者を砕いたもの)をしている、成分のとしては、転化糖や無機質(カルシウム等)、ビタミン類を含み、甘味は非常に濃厚である。吸湿性の高いのが特徴で保存時に溶解してくる。→真空乾燥したものは比較的溶けにくい。
和三盆糖(四国讃岐産)は、含有糖と分蜜糖の中間くらいの成分で赤糖や黒糖よりも純度が高くかつ結晶が小さいので溶けやすく、2%弱の転化糖を含んでいる。甘みが上品で蜜のにおいがおだやかなので、高級和菓子に用いられるが、手揉みによって蜜を分離すると言う製法上その生産量は非常に少ない。

再生糖とは、含蜜糖に粗糖を混ぜて、和三盆糖に似せた風味を出すことをねらったもので、和菓子用のさとうである。かつては、人王、文化黒、初雪、天光と言った製品が市場に流通したが、現在はあまりそのすがたを見ない。

このほかに海外には、北アメリカ産のソルガム糖、インド産のヤシ糖、カナダ産のカエデ糖などが世界には存在する。

 ソルガム糖とは、砂糖もろこしと言って冷害につよい作物から作られたものであるが、結晶化しにくくかつ分蜜も不可能であるので、シロップ状で食す。
 ヤシ糖とは、ヤシの花、茎、幹からとった液を原料として作られ精製されないものはやや色がついている。
 カエデ糖とは、砂糖カエデの樹液を原料となし、バニリンのような芳香物質を含んでいる、このため、風味の良い褐色個体の甘味料となって食される。日本ではホットケーキのシロップとして一般に知られている。

砂糖の成分についての考察
 砂糖はC,H,O、から成る炭水化物であるが、成分の違いによって単糖類とその他二糖類等にわけられる。

単糖類 ブドウ糖と果糖がこれに相当するCが6、Hが12,Oが6,の成分からなる。
ブドウ糖の特徴はアルデヒド基(CHO)を持っていることである。→アルドーズ
果糖の特徴はケトン基(C=O)を持っていることである→ケトーズ。
この二者は性格が若干違っているがメイラード反応等の性格は同じである。

二糖類 蔗糖、麦芽糖、乳糖がこれに相当する前記の単糖類が2分子結合して余った1分子のH2Oを離して出来るもので化学的に離合反応という。

ブドウ糖+果糖→蔗糖+水
ブドウ糖+ブドウ糖→麦芽糖+水
ブドウ糖+ガラクトース→乳糖+水

糖類の種類
甘味度 甘味度を測る機器は今のところ存在しない(糖度計は意味合いが違う→濃度を現わしている)味わって蔗糖の甘さを一または百として比較上の甘味を数字であらわしている。その理由は個人差味わい方、温度、濃度によって変わるからである。 

 一例をあげると 蔗糖15%=果糖13%=ブドウ糖20%
         蔗糖5%=果糖4%=ブドウ糖8%=乳糖15%
 の比率であるが、単糖類であるブドウ糖と果糖は高温になると甘味度が落ちる。

砂糖の溶解度の考察
砂糖の特徴として水溶性があげられる。特に高温になると大量に溶解する。
たとえば、20度の水には重量比で1対2つまり2倍の量の蔗糖が溶けるが、
     70度では 3.2倍
     100度では 4.8倍の蔗糖が溶ける。

(玉子小麦粉入り→カステラとほぼ同じ)煎餅(玉子煎餅)生地等の砂糖(蔗糖)の変化と製品の後味の考察
 玉子煎餅生地中では水温20度と仮定すれば加水量の2倍の砂糖が溶けていると推定できる。
 さらに焼成時の中心温度は90度前後であるのでもし水分が十分であればすべて溶ける。ただしでんぷんの糊化にも水分が必要であるので、焼成時の砂糖は一部溶けずに残っていると見なければならない。この残留量によって製品の後味が決定する。

蔗糖とブドウ糖果糖等との溶解度の比較と後味の考察
ブドウ糖は55度以下では蔗糖よりとけにくいが60度以上ではよく溶ける。
果糖は20度で蔗糖の2倍55度で3倍溶ける。
乳糖は溶けにくく高温にしても蔗糖3分の1程度しか溶解しない。

蔗糖溶液の濃度による沸点の上昇と性質
さとうを溶かして炊いて煮詰めてゆくと濃度の増す分だけ沸点が上昇し、シロップ、フォンダン、ヌガー、飴、カラメル、等、様々な性質を示す。

シロップ→砂糖の濃度が10〜50%のとき、沸点は102度付近となり液状のいわゆるシロップが出来る。
ジャム→砂糖の濃度が75%のとき沸点は106度付近となりいわゆるジャムができる。
フォンダン→砂糖の濃度が77〜90%のとき沸点は110度付近となりいわゆるフォンダンが出来る。
イタリアンメレンゲ→砂糖濃度が90〜91%のとき沸点は120度付近となりいわゆるイタリアンメレンゲが出来る。
キャラメル→砂糖濃度が92〜94%のとき沸点は122度付近となりいわゆるキャラメルが出来る。
ヌガー、飴→砂糖濃度が94%を超えると沸点は141度付近となりいわゆるキャラメル、飴が出来る。
カラメル→砂糖濃度が94%を超えるてなおかつ煮詰めて165度〜180度付近まであげるといわゆる一部炭化を起こして褐色に色づいてカラメルが出来る。

実際の菓子作りの際の煮詰めの見極め方
シロップの場合は水中試験→水中に1滴落として
1,散る
2,固まる
3,ボールになる
4,ボールが固いか柔らかいか

飴の場合→沸騰すると泡が出来る
1,煮詰まるまでは水分が多く粘度が低いので泡は大きい
2,煮詰まるに連れて粘度が高くなるので泡は小さくなる
3,混ぜ棒の先に飴をつけて引き上げさわれる温度になったとき(約60度)指先で揉んで意図のひき具合を見る。
4,火力によっては吹き上がるのでそのタイミングで判断する。

蔗糖の煮詰め液に対する酸の関係
蔗糖煮詰め液にレモン汁、食酢、クリームタータ(酒石酸)乳酸などの弱酸溶液を、加熱中に投入すると、蔗糖は加水分解されてより甘みの強いブドウ糖と果糖(転化糖)になる。転化糖の生成反応速度は、酸の種類、酸の濃度、加熱温度、加熱時間によって変化する。
この転化糖ができると例えばメレンゲ、フォンダ等の場合、そのシャリつきを遅らす効果がある。
 インベルターゼという酵素を添加することにより上記の効果を期待できるので擂り蜜等
熱を加え得ることが出来ない場合に利用する。
蔗糖の煮詰め液に対するアルカリの影響
 重曹を入れたりアルカリ塩を含む水(硬水)を使って煮詰めると蔗糖自身は変化しないが転化糖は例えばブドウ糖は黄色味を帯び、果糖は分解してブドウ糖になる。

吸湿性に点いての考察
泣きを防ぐ
蔗糖には強い吸湿性があり、これを利用して様々な製菓法が考案されている。砂糖の吸湿力を抑える為には油脂をその表面にコーテングする。
 
泣きを利用する
この逆に泣きを積極的に利用したものにウイスキーチョコレートボンボンやグリヨットがある。
 グリヨットとはアルコール漬けのチェリーにフォンダンを掛け、その上にチョコレートをコーテイングする。約1週間放置しておくとフォンダンはチェリーの水分を吸って泣き(溶け)チョコレートとチェリーの間に、砂糖、アルコール、水、の混ざりあった溶液ができる。
 ウイスキーチョコレートボンボンはウィスキーと砂糖を炊きウィスキーフォンダをつくりしめらせたでんぷん型の中に流し込み固まったフォンダをしめったでんぷんで包みその周りをチョコレートでコーテイングする。約1昼夜ほどするとやはりフォンダが泣き(溶け)ウィスキーチョコレートボンボンが出来る。
 古くからはフランス菓子のグリヨットがこの性格を用いている。グリヨットとは、アルコール漬けのチェリーにフォンダンをかけ、それを溶けたチョコに浸してチョコ掛けをする。1週間ほどすると中のフォンダンがチェリーの水分を吸って溶け、チョコとチェリーの間にアルコール砂糖水が出来る。
 なお、ブドウ糖を添加するとこの泣きが早くなる。

泣きと温度と湿度
 25度の温度の場合77.4%の湿度で泣き始める。化学反応の基本として温度が10度あがると反応速度が倍になるので、35度の場合約35%の湿度で泣始める。

蔗糖はこのように吸湿性が高いので、長期間保存する場合は温度湿度そして圧力に氣を配らなければならない。
 具体的には、湿度60%以下、温度38度以下で保存するのがよい。
 黒砂糖のは、湿度60%以下温度24度以下がよい。

砂糖の防腐性に点いての考察
 
 砂糖溶液が濃くなると浸透圧が高くなり微生物の細胞膜を破壊するので、防腐性が高くなる。具体的濃度としては、蔗糖なら40%から70%、ブドウ糖なら20%から60%果糖なら20%から50%である。
 たとえばジャムの場合、60%〜70%の濃度に煮詰めるのであるが、その時の蔗糖の沸点は103度から105度である。

砂糖の老化防止性についての考察
 
 アルファー化したでんぷんが再ベータ化することを老化といい、お餅が古くなると固くなるのは、この再ベータ化によるものである。アルファー化したでんぷんの水分が失われると再ベータ化してゆくのである。
 砂糖には保湿性が在ることは前述したが、この性質を利用して再ベータ化を防ぐことが出来る。
 同じ餅でも大福餅のように餅1砂糖2の割合で混ぜているものは、砂糖の保水性のお陰で水分が無くなることが無く、再ベータ化を防ぎ固くなることがない。
 また、カステラも小麦1砂糖2という配合であるので、スポンジケーキのように小麦1砂糖1の配合のものより、長時間しっとりとしてやわらかい。
 洋菓子和菓子とも多量の砂糖を用いるのは、長期間風味を維持させるためである。

砂糖の着色性についての考察

1, 砂糖を高温処理すると160度で溶融し始め、やがて次第に褐色になってくる、この現象をカラメルゼーションと呼び、代表的な着色反応である。

2, クッキービスケットを焼いたとき、砂糖が小麦粉や玉子のアミノ酸と反応して褐色になる。これをメイラード反応といい、メライジンという糖とアミノ酸の複合体が出来たときに起こる反応である。

3,果糖やブドウ糖はアルカリに弱くアルカリ系の膨張剤と一緒に加熱すると黄褐色に着色する、

4,蔗糖はアルカリにやや弱くアルカリ系の膨張剤と一緒に加熱するとカラメルになる、このためカラメルを作るときはアルカリを入れると作りやすい。