3,玉子
 0,概論
 鶏卵が食品として非常にポピュラーに用いられる理由は、他の蛋白食品である肉、魚等に比してもひけを取らないくらい風味がよく臭みも特に少ないからである。又、栄養的にも優れた蛋白質をもっているからでもある。
 玉子には乳化性、熱凝固性(そのときに結着性もでる)、起泡性といった様々な他の食品に見られない特異性があり、いろんな食材の媒介的な役割として用いられることが多い。
 ヨーグルトなどとあわすと、乳酸等の酸に反応して酸凝固性があるが、あまり調理に利用されている例をみない。
 ビータンのように石炭や木炭の灰を混ぜた土に2〜3ヶ月埋めて、卵殻が溶けて中の部分が固まるアルカリ凝固を利用した食品はある。
  この特性を利用して和風料理、洋風料理、中華料理、毎日のおかず(生卵がけご飯、ゆで卵、目玉焼き、卵焼き、スクランブルエッグ等々)、そして我々の菓子、それには、卵主体の菓子から、添加物的に少量使用する菓子まで、きわめて幅広くりようされている。
 
1,玉子の構造について

玉子は大別すると、卵殻、卵白、卵黄、胚の4種からなっている。

卵殻についての考察
 卵殻の一番外側にはクチクラがついていて、鶏の産卵時の分泌物が空気にふれた固まったものである。ざらざらとして薄い膜となっていて、細菌等の異物の侵入を防いでいる。
 クチクラの内側には外卵殻膜、さらに内側には内卵殻膜がある。
 これらの膜は玉子のとんがっていないほうの内部で分離し、空気部屋を作っている、この空気室は玉子が古くなるとどんどん大きくなる。これらの症状は玉子をひかりに透かしてみると、新しい内は透けて見えるが古くなると暗く見えるので玉子の外観から在る程度鮮度を推測することができる。

卵白についての考察
 卵白には、どろどろした固まりの混じる濃厚な卵白と、水のようにさらりとしたさらさら卵白とがある。濃厚な卵白は、卵殻膜の両端にくっついていて、しかも、あたらしい玉子ほどしっかりくっついていて離れにくい。また、その比率割合も多い。さらさら卵白はどろどろ卵白を取り囲む形でくっついていて内側の卵黄側のさらさら卵白は内水様卵白と学術的には呼ばれる。外側の卵殻側にあるさらさら卵白は外水様卵白と学術的には呼ばれる。
 また、卵黄と殻の間にはひも状のカラザとよばれる卵白があって、卵黄を中央の位置に保つ働きをしている。

卵黄についての考察
 表面は、強い卵黄膜で覆われている有精卵で2日に1個くらいの生む鶏であれば、中の黄身を箸でつまんでも破れない。玉子が古くなると弱くなる。鶏の体内では黄身の形成時間が異なるため、黄色卵黄は昼間白色卵黄は夜間にできるので同心円上の層をなして形成される。

 胚の部
固くゆでた玉子を半分に切ってみると卵黄の真ん中の上に直径2〜3ミリの白い斑点がある。これは有精卵であればそこから細胞分裂を始めて雛に生長する部分である。これを胚盤という。この胚盤の下から卵黄の中心に向かって白く延びるよく固まらない層があるがこれをラテプラの首とかラテプタと呼ぶ。

2,玉子の大きさについての考察
大中小いろいろあるが平均6c弱である。下は41cから上は76cくらいである。
大きい玉子ほど卵白の割合が多くなる。
新鮮な玉子は濃厚卵白が多いので、手割りの場合、卵殻とともに捨てられる割合は約16%である。古くなった玉子の場合は15%から14%である。
機械割り(遠心分離器)を使う場合は常に15%である。

計算上
玉子の85%が液卵で、そのうち卵白は52%卵黄は33%で水分量は全重量の76%である。→従って裏シール表示の卵は成分中の水分を抜いた量である卵の全重量×0.24で計算される重量で表示しなければならない、(大阪府流通対策室しらべ2010/10/14現在)

3,玉子の成分についての考察

 玉子の栄養価を高く、それだけで雛が誕生することを考えれば栄養バランスが最高に取れていると昔から考えられる。その為病人に対する最高の栄養食品であると考えられてきた。

卵黄の栄養成分についての考察
 卵黄の水分量はその重量の約半分である。よって、クッキーや小麦粉せんべいなどのつなぎや生地のゆるめにつかうときは半分の重量が水に取って代わるとかんがえればよいのである。
 固形分50%の内訳は1対2で蛋白質対脂質である。
 その他の成分としては2%の灰分を含みこのうち燐の含有量が特に多い。

 卵黄蛋白質の特徴としては脂質燐糖質類と結合していることである。こうして出来たリポビテシニンは最も乳化に関係が深くその主成分の燐がレシチンと結合して混合燐脂体となり、水中では溶けずに乳状に分散する。
 卵黄には無機質、ビタミン等の含有量が多く、かつ雛の生育に必要なすべての成分が含まれているのは当然である。

卵白の成分に着いての考察

 水分が9割近くあり、製菓生地混捏時の水に変えて白身を使う場合、必要加水量の1.1倍の白身を入れればよい。
 含まれている蛋白質は白身量の約1割であるが蛋白質の栄養的な質は高くいわゆる蛋白価は高い。→蛋白価とは蛋白質の摂取量に対する良否を判断する為に摂取量にたいする必須アミノ酸の含有率を現わしている、玉子の場合体に必要な必須アミノ酸がどの種類も必要量を超えているので蛋白価は100である。→アミノ酸の種類は30種類ほどあり、外部から摂取する必要性のあるアミノ酸は8種類であるこれを必須アミノ酸と呼び、その摂取量は決められている。この摂取量に対する蛋白含有率が蛋白価と呼ばれている。

 玉子蛋白のその主な内容は、
ビタミンB群
リゾチーム→溶菌作用があり、卵殻外からの有害微生物の侵入を防いでいる。
オボムチン→粘性作用
オボムコイド→糖結合型蛋白質、熱に対して安定している。
オボグロブリン→気泡性、溶菌作用がある。
オボアルブミン→燐や糖と結合している蛋白。

玉子の色についての考察

 卵殻の色は、品種によって異なり、卵用種は白色、卵肉兼用種は褐色のものが多い。
 卵黄はカロチノイドの色であり、主成分はルテインである。       

4,玉子の鮮度に着いての考察

 玉子は産卵直後から当然ではあるが品質が落ち始め、その製菓時の作業特性も落ちてくる。
 さらに進んで腐敗してくると(おおまかにひかりに透かしてみると腐敗玉子はひかりを通さずに黒く見える、その逆に新鮮な玉子は透けて見える)強烈な悪臭を放つプトマイシン(屍毒)と呼ばれる毒性の強い物質が発生する。→玉子の腐ったようなという臭いである。

 玉子の保存中に起こる変化は下記の如し。
 物理的変化としては
 1,濃厚卵白の流動化
 2,卵白水分の卵黄への移行
 3,気室の増大

化学的変化としては
 1,水分や二酸化炭素の消失
 2,PHの変化
 3,蛋白質の変化
 4,アンモニアの量や無機燐の増加
5,卵黄中の脂肪の酸化
 6,微生物によるアミノ酸等への分解

玉子表面の目視観察の考察
 新鮮玉子は卵殻の表面に光沢がなくざらざらしている。ただし最近の洗浄卵はこの限りにあらず。古くなると表面のクチクラがはがれて光沢が出てくる。クチクラは本来気孔からの水分とガスの蒸散を防ぎ外界からの細菌の侵入を防ぐ働きをしているので、取らないことが肝要である。
 古くなってゆくとクチクラがはがれて光沢が出てくる。(クチクラとは気孔からの水分の蒸発や白身中の炭酸ガスが抜けてゆくのを防いでいる。)
 古い玉子は水分が蒸発しているので軽くなっている。その比重は0.97位である。新鮮な玉子は比重が1以上あるので10%溶液の食塩水に入れると沈むが、古い玉子は浮く。

 新鮮度による割り玉子の考察
  玉子を割ってお皿に盛ってみると新鮮な玉子は高く盛り上がり古い玉子は低いこれは卵白が古くなると水溶性卵白が増えるためである。また、黄身に対して卵白中の水分が移行してゆくので、黄身も同様に低く広がるようになるためである。
 なお、保存温度が低ければ室温で2週間程度しか保たない玉子も1月ほど保つようになる。

玉子の化学的性質とその保存

酸に対する性質
 酸を加えるとタンパク質の傾向として凝固する。
 この性格を利用して卵白を泡立てるときレモン汁やクリームタータ(酒石英)を加えると泡立てが容易になることが経験的に知られている。スリ蜜を作るとき粉糖に卵白を加えお酢を加えてするのはこの効果をねらってのことである。

乳化力と粘着力
 マヨネーズを作るときに卵黄を利用するように卵黄の乳化力は自然界では最高傑作といわれるくらい食品としては理想的なものである。すなわち水と油といった本来混ぜることが不可能なものを混ぜ合わせる力をもっているのである。
 この奇跡的は乳化力は卵黄のレシチンと卵黄蛋白の結びついたレシトプロテインによるものといわれ、レシチン単独あるいは卵黄蛋白単独ではその驚異的な乳化力は発揮できないといわれている。その理由は、卵黄には親水性の性格を持つレシチンやケファリンと親油性の性格を持つステロール類が存在し、これらによって水と油を結びつける役割を果たしている。

 玉子の乳化力の測定には、基本配合のマヨネーズを小型のミキサーで一定時間同一の条件で作成し、その結果で判定する、さらにはできた製品を瓶詰めにして0度以下に放置しそれを常温に戻して遠心分離器にかけ浮上してきた油の容量を計測すると共に肉眼で油の分離が認められるまで瓶詰めのまま放置してその日数を計る方法等々いろいろある。
 また卵白は卵黄に比べてかなり乳化力は低く、通常のマヨネーズを作るときは卵黄に比べて50%から30%くらいの力しかない。
 アイスクリーム等においては、玉子を混ぜると独特の風味とボデイ形成テクスチャー形成に大きな効果があり、又、凝固点を変化させることなしに粘度を高めることができる。
 ただ天然であるので温度鮮度によってその乳化性及び粘着性はおおきく変化する。

玉子の保管中の変化について
 新鮮な卵白のPHは6.0から7.7付近であるが古くなると9.0から9.7に上昇する、その理由は保管中に卵殻の気孔から炭酸ガスが発散するためであるといわれている。卵黄はPHの変化がみられない。

 玉子の保管方法についての考察 
 玉子は保管中に様々な変化がみられるがその症状を列挙してみると
 1,卵殻よりの炭酸ガスの蒸散
 2,卵殻よりの水分の散逸
 3,上記理由による重量の減少
4,上記理由による卵白のPHの上昇
 5,卵白から卵黄への水分の移行
 6,濃厚卵白の現象
 7,微生物による腐敗

これらの症状を抑えるために
 1,卵殻表面を磨きシリコンオイルを塗布する。(シリコン皮膜をつくる)
 2,炭酸ガス中或いは窒素ガス中で保存する。
 3,冷凍卵にして保存する。
 4,乾燥卵にして保存する。

 なお、生卵は温度変化に著しく弱く、
37度なら2日、25度なら5日、16度なら20日、2度なら100日といわれている。

 特によい保存条件は5度で湿度は80%である。

タンパク質とその凝固性についての科学的考察
 タンパク質のその科学的構成はアミノ酸が重合度を深めて結合した高分子物質である。
 その分子量は卵白アルブミンで45000アルファリポプロテインで20万である。
 このうち卵白アルブミンはラグビーボール状の形態であり、卵黄リポタンパク質は球状である。
 これらのタンパク質が単純な一次構造から五次構造まで複雑な結合を行うことによってクリーム状の形状をとることができるのである。

タンパク質の変性についての考察
 割卵液を攪拌したり、少し暖めて攪拌したりすると、さらさらした流動性の性格を持つ、これをタンパク質の変性という。
 
 前述したようにタンパク質が球状からほぐれてからみあうことによって編み目構造をつくり元に戻れなくなる。この状態がクリーム状の状態である。

 また、五〇度前後にて加熱攪拌をおこなうと水のようにさらさらになってしまう。この現象はところどころで球状に絡んでいたタンパク質が攪拌と温度上昇によってその結合が切れてしまうためであると考えられている。

 100度前後で加熱するといわゆる煮貫きとなり不溶性のタンパク質に変化する。不溶性になったタンパクはしっかりと結合してきれいな編み目構造の中に水分を保持している。

加熱による変化についての考察
 玉子を加熱すると半熟卵から全熟卵になるが温度によってその変化は異なる。

57度においては白濁するだけである。
62度においては卵白は乳白状のやわらかいゼリー状になり流動性を失うが卵黄はやや粘るだけである。
65度においては卵白は全体が柔らかく固まった状態になり、卵黄は糊状餅状になる。
75度においては卵白は64度の時と変わらないが卵黄がかたい半熟になる。
80度においては卵白は完全に凝固してかたくなり卵黄も砕けるくらいの堅さになる。
85度においては卵白はさらにふくらみながら堅くなり卵黄は白色を持ってきてよく砕けるようになる。
70度の低温で長時間加熱すると半熟卵ができるがまだゼリー状を保っている。→この温度での凝固状態が最も消化吸収がよく病人食としてよくもちいられる。
65度の低温で50分以上加熱すると卵黄も卵白も半熟の通称温泉玉子ができる。

 全熟卵は水から加熱して沸騰させ、12分たったら取り出し冷水に浸す、もしこれ以上の時間加熱したり加熱を止めてもお湯中に放置すると卵黄の表面が黒く暗褐色になる。その理由は、卵白中の硫黄が熱にによって硫化水素と変化し、卵黄中の鉄分と硫化反応して硫化第一鉄が出来るためである。
 ゆでてすぐに冷水中に投入すれば卵白中にできた硫化水素は、温度の低い方へ浸透拡散しその大部分は卵殻を通過して冷水中に出て行ってしまう。

 卵白蛋白の主成分であるオポアルブミンは熱によって変性凝固する。
 ハムやソーセイジ、かまぼこなどの結着剤としてまた麺類の腰の増強効果に利用されてきた、近年はポリリン酸や松谷科学の加工デンプンが(スタビローズがこれにとってかわっている。

卵割溶液に対する添加物による化学的変化
 食塩や砂糖と卵割溶液に加えることによって、その凝固のしかたに違いがでる。
 水100卵割溶液20に薄めた卵割溶液に1グラムの塩を加えると凝固する、これは、食塩のナトリウム成分によるものである。
 塩の代わりにカルシウムを加えるともっと強固に塩の4倍の強度をもってかたまる。この性質を利用して、カスタードを作るとき牛乳を添加する。牛乳の中には100t中0.1cのカルシウムが含まれているため、塩を添加する場合にくらべ強力な凝固力がえられる。
 砂糖を添加すると玉子のタンパク質の凝固を遅らす性格があり、硬度は添加する砂糖量に応じて減少する。
 カスタードの場合でみると30%添加で無添加のばあいの約3分の1になる。

卵白の起泡についての考察

洋菓子製法において卵白を単独で泡立て小麦粉等に混ぜる別立て法と全卵に砂糖を投入して泡立てる共立て法とがある。
 卵白を攪拌すると気泡ができる理由は
 1,卵白のタンパク質は、卵白溶液の表面張力を小さくしようとする性格がある。
 2,溶液は表面に薄い膜を張って水分を保持する性格があるので、水分が蒸発しない。
 3,卵白のタンパク質は泡の表面膜同士がひっつきにくい。
 4,卵白のタンパク質は泡の表面で凝固しようとする。

気泡を行った時の卵白中の化学的変化についての考察

 卵白は攪拌を始めると、濃厚卵白を崩して水溶性になる、この段階では比較的おおきい気泡があり色は無色半透明である。感じとしてはやっと泡に成ったという雰囲気である。
 次に泡はやや小さくなり、ぬれてつやが出る状態になる、、泡立て器を引き上げてみるとその先端に曲がって揺れ動く様な状態であり、泡自身に弾力がある。この状態であればエンジェルケーキに用いたり、やわらかいメレンゲなどに用いる。通称半立てと言われる状態である。
 次に十分に泡立った状態で泡自身は小さくなるがその表面張力が増大し容積が増える。その色はさっきのキラキラした状態がだんだんとツヤが消えて来て、弾力が減ってくる。最後に全体に堅くなってくる。この堅さはたとえば容器を裏返しにしてみても泡が落ちない状態である。ケーキや堅いメレンゲ、マシュマロ、スフレ等に用いられる。
 次に泡は堅くもろくなり、表面は乾燥してくる。ここまで行きすぎるとオーバーホイップで全体の体積まで崩れ使いものにならなくなる。

  卵白に周速を加えると卵白のたんぱく質の分子が横につながって気泡力となる。この気泡力が温度によって差がでてくる。

 たとえば、水そのものはどんなに周速を加えて早くしても直ぐに消泡してしまう。ところが石けんや乳化剤、エチルアルコールなどを加えて周速を加えると速やかに起泡する。その理由は表面張力がこれらのものを混ぜることによって弱るためである。

 卵白は周速を加えることによって濃厚卵白が水様卵白になってこの水様卵白は表面張力が弱いので起泡しやすくなる。ただし、古い玉子の水様卵白はその維持安定性がないので、泡の安定性に劣る。


気泡作用と温度についての考察

 前述の表面張力は温度によって非常に左右される。洗濯のときお湯で洗う方が汚れ落ちが良いのはこのためである。
 玉子の場合でも冷蔵庫から出して直ぐに泡立てると起泡が弱い。25度くらいの室温になるまで放置してから起泡すると卵割液の粘度が低くなっているので泡立ちがよい。ただしこれは全卵の場合であって、卵白の場合は冷却して起泡するほうがキメの細かい安定した泡になる。

 全卵の卵割液に50%のショ糖を加え真夏の室温である30度、春秋の室温である21度、冬の室温である15度で起泡力を調べてみると、21度前後が一番起泡もよく安定する。

卵白液の起泡と添加物による変化についての考察

 卵白を泡立てるとき私達は経験的に砂糖やクリームタータ(酒石英)を加えるが、塩や油が混入しないように容器熱湯などでよく洗う。この理由は油脂には消泡力があるからである。又卵黄にも脂肪が含まれるので割卵時に混入しないように注意しなければならない。

 起泡力のよいものの順は
クリームタータ、無添加、塩、水飴、砂糖

 安定性のよい順は
砂糖、クリームタータ、水飴、塩

この結果を総合するとクリームタータが適正であることがわかる。

 塩は溶液の表面張力をすこし高めるので泡立ちはやや悪くなる、又塩は水との親和力が強いので、水分の移動が多く泡が乾いて崩れるのが早い。
 クリームタータは酸性であるので卵白のタンパク質に反応して凝固する、この性格を利用して堅くて離水量の少ない安定した泡を得ることができる。又卵白の等電点(PH)は4.8でこのときに最も泡立ちがよい。経験的にお酢を入れるのもこのような理由である。クリームタータは酸性であるので約2%くわえると前述のPHになるので、ホイッピングがよくなる。
 砂糖は水によく溶け、さらに砂糖液の粘性を利用して離水量の少ない安定した泡を得ることができる。欠点は気泡力が粘性によって落ちるのでホイッピングに時間がかかることである。ただし安定性があるので時間をかけて細かい安定した泡を得ることができる。

起泡の時間的変化についての考察
 卵白の気泡はホイップ直後はきれいな目の細かい泡がそろっているが次第に隣同士がくっついて大きな泡にかわりやがてくずれてゆく。

玉子の貯蔵についての考察
 現在私達が入手できる玉子は生卵、凍結卵、卵白冷凍卵、加糖冷凍全卵、乾燥卵、である。
 
凍結卵について

卵白の場合は生卵白とほとんどかわらない

全卵の場合は卵黄が凍結することによって糊状になり、解凍後も元の状態にもどらない。その結果気泡力は弱い。21度にしてやれば使えないことはない。

加糖冷凍全卵(和歌山県有田市で作っている)が気泡力もつよく品質が安定している、使用上品質上もすべての点において有利である。

乾燥卵について

乾燥卵は噴霧乾燥と真空凍結乾燥の2種がある。

乾燥卵白は起泡性がよいのでホイッピングに失敗したときに乾燥卵白を加えて生き返らせることができる。

乾燥全卵は起泡性は悪い。


玉子の調理の実際についての考察

1,カスタードプリン

 全卵液20、牛乳65、砂糖15から作られるカスタードプリンは玉子が熱変性凝固する性質を利用した食べ物である。
 プリンの固まる温度は
 全卵液が薄い⇒加熱速度が速い⇒玉子の鮮度が低い⇒混合物のPHが高い の順位で高くなってゆく。

1,オーブンに入れる前に予熱加熱として60度くらいまで(指がやや入れられるくらい)加熱する
 2,オーブンを使って加熱する(オーブンはゆっくり加熱する性格がある)カスタードは牛乳65砂糖15玉子20を混ぜてあるので熱をゆっくり全体に吸収する性格をもっているのでオーブン加熱は理想的である。
 3,加熱時間は160度40分くらいが良い
 
カスタードクリーム
卵黄、牛乳 、砂糖、でんぷん⇒コーンスターチか小麦でんぷんか小麦粉を使う
カスタードプリンとの違いは玉子の量が少なく代わりにでんぷんをつかうことである。
その理由は加熱して冷却するとクリーム状に変化する性質がでんぷんや小麦粉にはあるからである。
 カスタードクリームの製造においての注意点は玉子のタンパク質の熱変性に応じて攪拌の仕方をかえることである。
 たとえば、鍋底には火が直接当たっているので早く固まるこれを防ぐために攪拌を工夫しなくてはならない。
1,鍋底の火力を小さくする。
2,鍋底をこそげることのできるヘラを使う。
3,攪拌のスピードとタイミングに細心の注意を払うこと。タンパク質の結合を切らないために適度のスピードが必要である。
4,濃度の安定を見極わめて加熱を終了しなくてはならない。カスタードをさじですくってタラしたりさじに着くカスタードの厚さで判断する。
5,加熱終了したら速やかに全体を冷却しなければならない。できるだけ少ない量に小分けして冷ますのがよい。このときに速いスピードで攪拌分離するとせっかく出来たタンパク質はの網目構造がくずれてしまうので、注意しなければならない。連続的に大量に作るためにはイタリアンジェラードアイスクリームを作る機械が適している。

 カスタードクリームに使うでんぷん等は、コーンスターチ単体と薄力粉単体、強力粉単体、そしてその混合体を用いる。
 堅さでみると、コーンスターチ、薄力粉、強力粉の順である。